作曲教科書⑤(和音編Ⅱ)

コードについて

作曲をしたいと志す者であれば、『コード』という言葉は誰でも1度は聞いたことがあるように思う。ここでは、コードとは何かを具体的に解説し、理解してもらうことを目的とする。
まずコードとは、高さが異なる複数の音が同時に響く音のことであり、和音のことである。

3つの音からなるコードを3和音
4つの音からなるコードを4和音

などと呼ぶ。
今回は『三和音のコードネーム』、『四和音のコードネーム』を中心にハーモニーを学習する。同時に、音楽を聞いて、ハーモニーを聞き取ろうと努力することを実践してほしい。それが、今回学ぶことを身につけるための最も短い近道になるだろう。

三和音

和音のしくみ

三和音は、音階の上に3度で積み重ねられてできている。それを順に、Ⅰ(一度)の和音、Ⅱ(二度)の和音・・・と呼ぶ。

図8.1 和音.PNG

ここに示した三和音は、最も基本的な和音である。音の高さは違っても、同じ高さをもつ和音があるのが、実際に弾いてみるとわかるだろう。

図8.2 和音のグループ.PNG

  • aのグループ
    明るい響きを持つ、『長三和音』という。英語ではmajor(メジャー)コードという。

  • bのグループ
    少し暗い響きを持つ、『短三和音』という。英語ではminor(マイナー)コードという。

  • cのグループ
    長音の音階ではひとつだけしかなく、とても不安定な響きを持つ。これは減三和音といい、英語ではdiminish(ディミニッシュ)という(普通はdim.と略記する)。しかし、一般には四和音(七の和音)のときにこのdim.を用いる。

コードネームで和音を表す(長調・三和音)

次は、作曲教科書③(楽譜の読み方編) の最初に覚えてもらった英語の音名と、和音の特徴を示す単語(先ほど出てきたmajorやminorやdim.など。他にもある)を組み合わせて、和音に名前をつけよう。
ここでは長調の三和音のコードネームを扱う。

まず、上でグループaに分けた和音はmajorといった。これが英語の音名と結びついて、例えばⅠの和音はCM(シー・メジャー)となる。ただし、メジャーの場合はMを書かず、単にCとだけ示す。

図9.1 メジャー・コード.PNG

次に、図でグループbに分けた和音はminorといった。これが音名と結びついて、例えばⅡの和音はDm(ディー・マイナー)となる。メジャーと区別するためにマイナーのmは小文字のmで、マイナーの場合は必ずつける。

図9.2 マイナー・コード.PNG

上でcにグループ分けしたdim.については、次項の「四和音」で解説する。

長調・三和音のコードまとめ

以下に、もう一度ハ長調の音階、和音、コードネームを示すので、もう一度確かめてマスターしてほしい。

図9.3 ハ長調のコードまとめ.PNG

音階上の名称

下の図に示す、音階上の音の名称もここで覚えておこう。

図10.1 音階上の音まとめ.PNG

Ⅰを主音、Ⅳを下属音、Ⅴを属音、ⅤⅡを導音という。

長音階と短音階

ここで、長音階と短音階について述べておく。
長音階については今まで触れてきたので割愛する。
短音階は、長音階の主音の3度下から始まる音階である。
図の短音階は、主音がイ(ラ、A)なので、イ短調という。

図10.2 長音階と短音階.PNG

3種の短音階

短音階には以下に示す3種類がある。いずれもよく用いられるので、すべてここでしっかり覚えておくこと。ここでは、わかりやすいようにすべてイ短調で示してある。

図10.3 3種の短音階.PNG

ここで、3種類を見比べると、短音階の変化に気がつくだろう。aの自然短音階は長音階の3度下から始まり、変化する音は一つもない。cの旋律短音階になると第ⅤⅠ音、第ⅤⅡ音の二つが半音上がって変化するので、音を実際に出してみてよく比べてみてほしい。
ちなみに主音、下属音、属音、導音という音階上の音の名称に関しては長音階のときと同じである。
それでは、いよいよ短調のコードに入っていく。短調には3つの音階があるので、それによって当然和音が変わるので注意しよう。今回はその中で最も一般的なbの和声短音階で話を進めていく。

短音階の三和音

前に勉強した長音階の三和音と同様に、短音階の三和音も音階上に3度で積み重ねられてできているという構造は変わらない。

図11.1 短音階の三和音.PNG

図の譜例はイ短調のものである。和声の最低音を根音(ルート)、その3度上を第3音、さらにその3度上を第5音と呼ぶことも、長音階の時と同じである。
ちなみに、この短音階の三和音の第3音を半音上げると、メジャー・コードになるので覚えておくとよい。

短音階における三和音の種類

まずは上に示した和音をすべて弾いてみて、響きを聴いてみてほしい。
長音階のときと同じように、和音をいくつかのグループに分けて説明する。長音階に出てこなかった種類の和音もあるので、注意して見てほしい。

図11.2 短音階の三和音の種類.PNG

  • aのグループ
    短三和音である。長音階ではⅡ、Ⅲ、ⅤⅠがそうであった。もちろん、minorの和音である。

  • bのグループ
    長三和音で、これも前に説明してある。長音階のⅠ、Ⅳ、Ⅴの和音にあたるので、忘れていたら戻って確認しよう。

  • cのグループ
    減三和音である。長三和音が明るい響きを持つ和音、短三和音は暗い響きを持つ和音であったが、この減三和音はどうであろうか。随分、不安定な感じがするだろう。これは長音階ではⅤⅡの和音であった。この短調ではⅡ、ⅤⅡに登場する。

  • dの和音
    増三和音という。これが今回初登場の和音であり、オーギュメント(増加)を意味している。G#の音が半音上のAに行きたがっているのが感じられないだろうか。

減三和音と増三和音のコードネーム

まず、上に示したうちのcグループ(減三和音)のコードネームについて学ぼう。


図12.1 減三和音と増三和音のコードネーム.PNG

これは、長調ではⅤⅡの和音、短調ではⅡ、ⅤⅡの和音である。長調のⅤⅡの和音をコードネームで表すと、Bdimと書くことができるが、前にも書いたように、dimの和音は四和音が一般的である。それでは、コードネームでこの三和音を表すにはどうしたらよいのか。上の図のイとロを比較してほしい。

イは、bグループの短三和音に属し、コードネームはBm。ロと比べてみると、根音と第3音は同じで、第5音のみが異なっている。イのBmの第5音のシャープがなくなっている形であるのがわかるだろう。つまり、ロの第5音は、イの第5音より半音低くなっているということである。それをコードネームで書き表すと、Bm-5またはBm♭5となる。
『-5』や『♭5』はともに『フラットファイブ』と読むので、この場合は『ビーマイナー・フラットファイブ』と読む。なのでイ短調のⅡの和音もBm-5、ⅤⅡの和音はG♯m-5となる。

次に、dグループ(増三和音)のコードネームについて学ぼう。

この増三和音は短調のⅢの和音に出てきている。(図 12.2)の譜例でのイとロを比較してほしい。

図12.2 減三和音と増三和音のコードネーム2.PNG

イは長三和音なのでCであるのは明らかである。対して、ロはイに対して第5音だけが半音上がった格好をしている。この種類の和音をオーギュメント(augment)といい、コードの右下にaugと書き添える。つまりロの和音はCaug(シー・オーギュメント)という。

四和音

セブンス・コードについて

ここで新しいコード『セブンス・コード』についてを学ぼう。楽曲を作るうえでもかなりの頻度で出てくるので、ここでしっかり学んでおこう。

まずは、次の譜例を見てほしい。
図13.1 移調.PNG

aはハ長調(Cmajor)、bはニ長調(Dmajor)、cは変イ長調(A♭major)である。音の高さには違いがあるが、全く同じメロディ、全く同じリズムであるのが実際に演奏してみるとわかると思うので、確認してみよう。これが調を移す、すなわち移調の概念である。

転調

調が曲の途中で変化することを転調という。少しずつ変化したり、急に変化したり、その手法はさまざまである。これに関して、ここでセブンス・コードを学んだのちに覚えることになるので、あらかじめ知っておいてほしい。

ここまでわかりやすいように三和音を扱ってきたが、ここで四和音、すなわちセブンス・コードを学習する。セブンス・コードのコードネームにはM7、m7などがつくので、これらのアルファベットと数字に気をつけてほしい。ポピュラー音楽は、このセブンス・コードが主体なので、以下を熟読して絶対におさえておこう。

長音階におけるセブンス・コード

まず以下の譜例を見てほしい。
下に表記された和音記号を見ると、記号の右下に小さく7の数字がついているのがわかるだろう。これが四和音の記号である。Ⅰ7は『いちのしち(なな)の和音』と読む。譜例の下に、コードネームの表記と読み方も示したので、合わせて覚えよう。

図14.1 長音階におけるセブンス.PNG

複雑になってきたので、何回も読んで覚えるようにしよう。

短音階におけるセブンス・コード

続いては短音階におけるセブンス・コードについて勉強する。今回は和声短音階を用いる。

図14.2 短音階におけるセブンス.PNG

もちろん、下に示されている和音記号は長調と同じである。

図14.3 マイナーのコードネーム.PNG

[ ]内は長調、短調ともに同じ和音の別の表記の仕方である。短調におけるセブンス・コードも、ポピュラー音楽を聴いていると、よく耳にする響きだろう。

それでは、ここまで学んだことを下の楽譜で実践しよう。

図15 ここまでの実践.PNG

この曲は有名なスコット・ジョブリンの『エンターテイナー』である。ハ長調なので基本となる和音はハ長調の音階の上に積み重ねられた三和音か四和音になる。しかし、それ以外の和音(□でくくってある)も4種類登場している。これは今回少し触れた転調とも関わりが深く、一般に借用和音と呼ばれている。和音記号で表すと少し難しいが、まずはコードネームでしっかり読み取る練習をしてほしい。

執筆者:いちのせ つよし


  • 最終更新:2014-07-12 23:22:18

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